後継者選びの3ステップ
後継者選びでは、人選より先に会社の将来の道筋を定め、手順を分けて進めることが大切です。

1993年、アメリカの小売グループであるDart Groupで、後継ぎをめぐるお家騒動が表面化しました。傘下のCrown Booksは1977年、創業者の父が長男の論文の構想を後押しして始めた書店チェーンです。長男は、72歳の父の後を継いでグループの会長兼経営責任者になると見られていました。
ところが1993年、父は後継ぎについての考えを変え、長男を解任し、次男を後継ぎにしました。地元紙の報道を見ると、一家の争いの原因は、事業承継問題と、財産分与問題だとされています。裁判にて、父がグループの経営権を持ち続け、父と次男が母と長男の持分を買い取りました。
書店業界の変化とお家騒動をめぐる混乱
Crown Booksはその後、1998年7月には連邦破産法11章の適用を申請し、174店のうち79店を閉じると発表しています。地元紙の報道を見ると、Crown Booksは本の業界の変化に対応できず、1993年に始まったお家騒動による経営の混乱にも揺さぶられたとされています。
1999年11月に破産手続きを終えましたが、その後ふたたび申請し、清算されました。業界誌の記事によると、書店チェーンとして過去最大の経営破綻だったとあります。最後の会長は、資本不足とタイミングの悪さが重なったと語っています(出典:The Baltimore Sun(1993年6月8日、1994年5月19日、1994年6月2日、1998年8月4日)、Publishers Weekly(2001年2月19日、2001年6月4日))。
後継ぎを決める前に、会社の出口を決める
事業承継において、人を選ぶところから始めると、感情が先に立ちやすくなります。会社の出口を先に決めておくと、後継ぎに何を託せばよいのかを書き出しやすくなります。
会社の出口は4つあります。廃業(たたむ)、売却(売る)、M&A(ほかの会社と一緒になる)、上場です。親族や社員が継ぐ事業承継は、この4つとは別の道になります。事業承継後も、会社の出口は引き続き4つ残っています。事業承継とは、出口を次の社長に託すことを意味します。
廃業以外の3つの選択肢においては、必ず「この会社はいくらなのか」を問われます。出口の準備は、会社の価格を知ることから始まります。
法・理・情の順番で進める
Dart Groupの争いは、事業を誰が継ぐかと、財産を誰が引き継ぐかが同時に争点になりました。後継ぎの人選と財産の分け方は、別の書面に表していく必要があります。
法、理、情の順番で進めていくと、話し合いが安定します。法では、法律と現在の持分を確認します。理では、事業の数字と役割で、なぜその人に託すのかを明確にします。情では、家族や幹部の気持ちを聞きます。感情を後回しにするのではなく、順番を区切ってから聞くことで、人選問題を最小限にすることができます。
この順番で確認・記述すると、後継ぎを変更する場面でも、会社の価格と持分の扱いが先に決まっているので、経営への影響を小さくできます。
日本では、後継ぎが「いない」または「未定」の企業は50.1%(13.8万社)あります(出典:帝国データバンク)。後継ぎの条件を先に設定しておけば、いつのタイミングであれ、幹部に権限を渡す範囲は明確です。。
御社では、後継ぎに渡す権限の範囲と、その先に選ぶ出口を、一枚に書けるでしょうか。
※HTML版がこのページの正本です。本記事は事業に関する教育と情報提供であり、売却価格・融資・投資・税務の個別の助言ではありません。