後継者がいなくても、自社の価格を知っておくこと

後継者が未定の企業が半数を超える今、どの出口を選ぶにも、自社の価格を事前に知っておくことが選択肢を守ります。

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BCB Japan 編集部
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後継者がいない、または未定の企業は、2025年の調査で50.1%、約27万社にのぼります(帝国データバンク)。社長の平均年齢は63.81歳です(東京商工リサーチ)。会社の出口をどうするかは、経営者にとって先送りしにくい課題になっています。

四つの出口と、共通する株の評価

出口は、親族承継、社員承継、売却、廃業の4種類に分けられます。親族承継では、後を継ぐ人の意思と適性に加えて、株を移動した場合に生じる相続税や贈与税を試算しておく必要があります。社員承継では、経営を任せられる人を育てることと、その人が株を買い取る資金の用意が課題になります。売却では、買い手の有無と価格・条件の折り合いが分かれ目です。廃業では、取引先や従業員への影響を考えながら、いつ、どう終えるかを決めます。

どの道を選ぶにしても、避けにくいのが自社株の評価です。承継なら売買価格や税務上の評価、売却なら買い手目線の価値、廃業なら株や事業用資産の処理に伴う税額が論点になります。

非上場株式の評価見直しと、相続税評価

この自社株の評価について、国税庁が非上場株式の評価方法の見直しを進めているという動きがあります。

2026年9月、中小企業庁がこの見直しに対して意見を出しました。もし評価方法が見直されれば、自社株の相続税評価は今の前提から大きく動く可能性があります。見直しが実際にどうなるかは分かりません。ただ、前提が変わる可能性がある以上、今の時点で自社の株価がどう計算されるのかを知っておくといいでしょう。

相続税の負担を考えるとき、税率の高さだけに目が向きがちです。相続税の税率は、55%を上限とする累進税率です(相続税法)。税率は課税対象額に応じて段階的に上がる仕組みなので、全額に55%がかかるわけではありません。

相続税評価と買い手価格は別物

自社株の相続税評価と、買い手が見る会社の価格は同じではありません。相続税では、会社の純資産や利益などを一定の方式で評価します。売却の場合は、買い手が会社の将来の利益から価格を考えます。買い手は、社長の報酬を同じ規模の会社の社長を外部から雇った場合の相場に置き直し、その上で残る利益を基準に見ます。社長の報酬が高めでも低めでも、買い手の試算は変わります。買い手がその利益の何年分で買うかという尺度をPERといいます。年数が長ければPERは高くなり、短ければ低くなります。PERは買い手の期待や業界の傾向によって変わるため、売却価格が一つの計算式で決まるわけではありません。

黒字廃業の数字と、価格を知る順番

2024年の休廃業・解散は69,019件で、うち51.1%が黒字でした(帝国データバンク)。利益が出ている会社でも、出口を決められずに会社をたたむケースはあります。黒字の会社には、売却という道が残っています。ただし売却には時間がかかります。買い手探しにも条件の調整にも、まとまった期間がかかります。後継者が決まらないからといって慌てて値段をつけるより、先に自社の利益の質と、買い手の目線での価格の幅を知っておくと、交渉の場で判断がぶれにくくなります。

自社の価格を知っておくことには、もう一つ意味があります。後継者が現れると、親族であれ社員であれ、株をどう引き継ぐかが論点になります。このとき、相続税評価だけを知っているのと、買い手目線の価格も知っているのとでは、株の移動の設計が変わります。相続税評価では低く、買い手目線では高く見られる会社があります。その差を知らないまま親族に株を移すと、後で税務上の想定外な問題が起きます。逆に、相続税評価が高くても、買い手が見る利益が小さければ、売却価格は思ったより低くなります。どちらの数字も、先に一度は押さえておくことをお勧めします。

出口を決めるときは、最初から一つの選択肢に絞り込まず、自社の価格と、それぞれの出口にかかる時間や税金を並べて比べます。どの出口を選ぶにしても、最初に自社の価格を知っておくと、後の段取りを逆算しやすくなります。後継者がいない、または未定の企業が50.1%にのぼる現状では、自社の価格を把握しないまま時間が過ぎると、選べるはずの道を選べなくなります。

※HTML版がこのページの正本です。本記事は事業に関する教育と情報提供であり、売却価格・融資・投資・税務の個別の助言ではありません。

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