会社の「買われやすい状況」とは

株主の対立と株式の流出が重なると、外部から経営権を握られやすくなります。実例をもとにその構造を示します。

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BCB Japan 編集部
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利益とPERを掛け合わせて、会社価格が算出される構造を示した図

定食店を展開する大戸屋ホールディングスの代表取締役会長が、2015年7月27日、57歳で亡くなりました。会長の家族である創業家と経営陣は、その後、会長の長男の処遇などをめぐって対立しています。2019年10月1日、外食大手のコロワイドが、発行済み株式の18.67%を創業家から取得し、筆頭株主になりました。創業家が株を売った理由は、コロワイドも大戸屋ホールディングスも明らかにしていません。(出典:大戸屋ホールディングスの適時開示(2020年7月9日、9月9日、11月4日)、日本経済新聞(2019年10月1日)、日経ビジネス(2020年10月9日)、流通ニュース(2015年7月27日))

創業家が株を手放したとき

2020年6月の定時株主総会では、コロワイドによる大戸屋ホールディングス子会社化を前提とした株主提案が否決されています。7月9日、コロワイドは株式の公開買い付け(あらかじめ買付価格や期間、買付予定株数などを公表し、証券取引所を通さずに市場外で不特定の株主からまとめて株式を買い集める手法)を発表しました。大戸屋ホールディングスは、事前の連絡はなく一方的で突然だったとし、取締役11人の全員一致で反対を表明しています。公開買い付けは9月8日に終わり、コロワイドは議決権の46.77%を持つことになりました(出典:大戸屋ホールディングスの適時開示(2020年9月9日))。

経営権の移動

11月の臨時株主総会では、取締役10人の解任と7人の選任が可決され、社長はコロワイド出身の人に代わりました。その後の決算資料で、大戸屋ホールディングスはコロワイドを「親会社」と記載しました。日経ビジネスは、大戸屋ホールディングスが負けた根本的な理由を、そもそも買われやすい状況を作り出してしまったことだと指摘しています。

買われやすい状況

日経ビジネスが指摘した「買われやすい状況」を、この記事で見てきた事実に沿って整理します。

まず、創業家と経営陣が対立していました。次に、創業家が持っていた発行済み株式の18.67%が、一度にコロワイドへ渡り、コロワイドは筆頭株主となりました。そのうえでコロワイドは公開買い付けを行い、議決権の46.77%を持つことになりました。

一般に、まとまった株を持つ株主と経営陣の考えが分かれたまま、その株が会社の外に出ると、外部の誰かが株を買い集めて経営権を握りやすくなります。誰が株を持つかによって、会社の意思決定をする人が変わります。議決権を持つ株主の意向は、取締役の選任を通じて経営に反映されるからです。

上場していない会社でも、株が親族や元役員などに分かれていると、相続や売却をきっかけに、思わぬ相手に株が渡ることがあります。株を手放す側も買う側も、「この会社はいくらなのか」を考えます。株の行き先は、会社の価格とも結びついています。

会社の価格を考える指標の1つに、株価収益率があります。株価収益率は、株価を1株当たり利益で割ったもの。今の利益水準のまま推移したとき、投資した資金を回収するのに何年かかるか、という意味でもあります。この株価収益率をPERと呼びます。

買い手は、会社の利益にPERを掛けて価格を試算することがあります。また、M&Aの仲介では、時価純資産に営業利益の数年分を足す年買法という別の物差しが使われることもあります。価格の付け方は1つではありません。

誰が自社の株を持つか、会社の価格をどう試算するか。この2つは、経営権の行方と、たたむ以外の出口を選ぶときの重要事項です。あなたの会社では、誰が株を持っていますか。そして、会社の価格を聞かれたときに、答えられる状態にありますか。

※HTML版がこのページの正本です。本記事は事業に関する教育と情報提供であり、売却価格・融資・投資・税務の個別の助言ではありません。

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