黒字解散の事情
利益の有無だけでは、会社を続けるための資金繰りは説明できない。支払いと入金の順番、借入と出資の違い、返済期間と承継の時期から見ていく。
帝国データバンクが調べた2024年の休廃業・解散は69,019件で、うち51.1%が黒字だった(帝国データバンク)。製造業や卸売業では、仕入れの支払いと売掛金の回収に時間差があるため、こうした景色は特別ではない。利益の有無だけでは、会社を続けるための資金繰りを説明するのは難しい。
「返すお金」と「手放す経営の自由度」比較
資金調達には、返済義務のある「借入」と、株式の一部と交換する「出資受入」がある。借入は銀行、日本政策金融公庫、信用保証協会の保証を付けた融資などが例だ。出資はベンチャーキャピタルや事業会社が株式を買い取る形になる。
借入は、期限までに元金と利息を返す必要がある。出資を受け入れると返済の代わりに、議決権や将来の利益分配の一部を相手と共有することになる。経営者にとっては、「返すお金」と「手放す経営の自由度」を比べる話となる。
[借入] 回収より返済が先にやってくるケース
銀行融資は、短めの運転資金と、長めの設備資金に分かれる。受注が増えて仕入れが先行する時期に、運転資金だけを短い返済期間で借りると、売掛金の回収が入る前に返済が始まったりする。売上が伸びているのに手元現金が減るのは、この時間差が原因になることが多い。
[出資] 出資は時間を株式と交換すること
出資を受けると、借入のように毎月の返済はない。ただし、第三者に議決権の一部が移るため、経営の進め方をすり合わせる必要が出る。将来、株式を買い戻す予定でも、その時点の企業価値によって条件が変わる。出資は返済の負担を減らすというより、成長に使う時間を株式と交換する形に近い。
70歳以上の経営者の約半数は後継者不在
東京商工リサーチによると、社長の平均年齢は63.81歳だ(東京商工リサーチ)。借入の返済期間を組むとき、経営者が自ら返し終える年齢と、後継者が事業を引き継ぐ時期が重なってくる可能性も多い。返済期間だけを長くすると、経営者本人の負担は小さくても、次世代に借入や個人保証の条件が残る。中小企業庁の調べでは、70歳以上の経営者の約半数に後継者がいない(中小企業庁)。
資金繰り(借入/出資)の目的を見極める
資金繰りは、売上の大きさより、支払いと入金の順番で決まる部分が大きい。月次の収支だけでなく、向こう1年の資金の出入りを並べると、どの時点で運転資金が不足するかが見える。融資や出資を選ぶことは、その不足を埋めるために返済や支配権の条件を動かす判断なのである。
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