出口を後回しにしない設計

事業の出口準備は数年の時間を要する。専門家支援体制が整う今、早めに自社の状況を確認することが重要だ。

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BCB Japan 編集部
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現在、補助金ポータルにおいては、売り手支援型の事業承継・M&A補助金の専門家を配置し、売り手をサポートする体制が整いました。

経営者が自社の出口を考えるとき、これまでは後継者への承継が中心で、会社を譲る選択肢や廃業の準備は後回しにされていました。現在のこの枠組みを見ると、売る側や畳む側にも専門家の支援を当て、より良い出口選択および準備ができるようになってきています。

数字を見ると、猶予は長くない

社長の平均年齢は63.81歳です(東京商工リサーチ)。70歳以上の経営者の約半数に後継者がいません(中小企業庁)。後継者を社内で育てるにしても、社外から招くにしても、事業を引き渡す前には相手の選定、権限の移し方、株の移動、取引先への説明という手順があります。着手から完了までに数年単位の時間を要する案件は少なくありません。

出口を決めないまま時間が過ぎると、黒字の会社でも止まることがあります。2024年(1〜12月)の休廃業・解散は69,019件で、うち51.1%が黒字でした(帝国データバンク)。赤字だから畳むのではなく、次へ渡す準備が間に合わず、停止を選ぶ会社があることがわかります。

売却と廃業で、最初の点検項目が重なる

会社を譲る場合、買い手は「契約書」「就業規則」「取引先との契約」「設備の老朽度」「代表者への依存度」などを調べます。廃業の場合も、「従業員の退職」や「在庫の処分」「借入金の整理」「賃貸物件の原状回復」らが発生します。この点検を後回しにして買い手や支援者と話し始めると、交渉の途中で「知らなかった」という事実が出てきて、条件が変わる原因になり得ます。

売り手側の専門家が入ると、相手に開示する前に自社の状態を把握し、補強できる箇所を整える時間を持てます。補助金の専門家活用枠に売り手支援型があることを考えれば、経営者はこの準備を個人の手探りで抱えなくてもよくなってきたということです。

専門家に渡す前に、手元にあるもの

会社の実態を知るための一次情報は、経営者の手元にあります。株主名簿、定款、借入金の返済表、賃貸借契約書、取引先との契約書、従業員名簿などです。書類が整っていない場合は、そのこと自体が引き継ぎや譲渡の課題になります。専門家は、その課題を解決する順番を考えるのに役に立ちます。

個人名義の資産が出口を複雑にする

会社が使っている土地や建物が社長個人名義になっていると、会社の譲渡や廃業のときに貸借関係の整理が加わります。契約書がなければ、引き継いだ側と社長の家族との間で使用条件が曖昧なまま残ることになります。出口の設計では、会社名義と個人名義の境目を先に確認する作業が欠かせません。

経営者個人の出口と会社の出口の違い

会社に現金を残すあまり、経営者個人の手元資金が薄くなる例があります。賞与を受け取らなかった経営者の割合は71.3%です(Forbes JAPAN)。会社を畳むとき、個人の生活費や納税資金は会社のお金から出せません。会社の出口を設計するときは、経営者自身の出口も同じテーブルに載せることになります。

自社株の承継も、個人の資産と会社の運転資金が混ざりやすい領域です。経営者が元気なうちに株式の引き渡し先を決めておくと、相続が始まった後に家族だけで会社の行き先を話し合う負担を減らせます。

人手不足が出口の判断を早める

2024年度(4月〜翌年3月)の人手不足倒産は309件です(東京商工リサーチ)。採用難が続く現場では、代表者が交代する前提で事業を整理し、残る従業員が続けられる形を選んでいくケースも増えています。出口を考えることは、会社を畳むことと同義ではなく、働く人を減らさずに事業を軽くする経営判断でもあります。

売り手支援を広げた背景には、出口を準備する経営者を増やしたいという意図がうかがえます。ただ、制度を使うかどうかは二の次で、自社の現状を経営者がどれだけ正確に言語化できるかが先に問われます。あなたの会社は、いま仮に後継者にも買い手にも見せられる状態にありますか。

※HTML版がこのページの正本です。本記事は事業に関する教育と情報提供であり、売却価格・融資・投資・税務の個別の助言ではありません。

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