【事業承継】株式所有から生まれる3つの権利

株式が持つ3つの権利を理解し、所有と経営をあらかじめ切り分けておくことが、事業承継をスムーズに進める土台となります。

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BCB Japan 編集部
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持株会社で所有と経営を分けることで、会社の出口の選択肢を残せることを説明した図

2025年9月8日、アメリカのメディア企業News Corpが、一族の家族信託をめぐる裁判の終結を発表しました。同社の株を持つ一族の家族信託について、ネバダ州で裁判が続いていました。信託の受託者(財産を預かり、契約や目的に従って管理・運用する人)と受益者(信託された財産から生み出された利益を受け取る人)が合意し、すべての訴訟が終わったという内容です。

この合意によって、泥沼だった争いが決着しました。信託から外れる家族のメンバーは会社の株を手放し、その代わりに「現金」を受け取って身を引くことになりました。一方、残った家族は新しく「LGC Holdco」という受け皿の会社をつくり、散らばっていた会社の株をすべてその会社に集約しました。

(出典:News Corpのプレスリリース「News Corp Announces Resolution of Murdoch Family Trust Matter」(2025年9月8日))

その株の議決権は、家族の一人が握ることになりました。議決権とは、会社の経営にかかわる決定を左右する権利です。この合意で、株を所有する会社と、決定権(議決権)を持つ人が分ける形になったのです。

### 議決権をひとりに集める

この事例はアメリカの話であり、日本の会社法や信託の仕組みと直接重なるわけではありません。しかし、「誰が株を所有し、誰が経営の決定権を持つかを切り分ける」手法は、日本の会社にもそのまま当てはまります。

信託から外れた家族はお金を受け取って会社の権利から完全に手を引き、残った株は「LGC Holdco」という会社に集約されました。

この会社は、株を持つことに特化した「持ち株会社」です。経営における決定権(議決権)は家族の一人に集中させ、会社の「所有」と「意思決定」が別々に整理された状態を合意によって作り出しました。

### 株式会社が持つ3つの権利

株式会社に関わる権利には、大きく分けて次の3つがあります。

1. 会社を保有する権利(株そのものを資産として持つ)

2. 利益(配当)を受け取る権利(お金をもらう)

3. 会社のことを決める権利(決定権。ふつうは株の割合に応じるが、契約で変えられる)

多くの中小企業では、この3つすべてを社長ひとりが握っています。しかし、会社の出口や次のステージを考える上では、この3つをあらかじめ切り分けて設計しておくと整理しやすくなります。このうち、会社を保有する権利は人に渡さず、利益を受け取る権利と会社のことを決める権利は、話し合って決めることができます。

株を不用意に周りへ配ってしまうと、危険な「ねじれ」が起こります。

* 現場で働く経営陣: 会社を前に進めたい

* 株を持つ親族など: 経営は分からないが、配当や権利だけを主張する

このように「動かす人」と「権利を持つ人」が分断されると、会社の売却や事業承継といった重要局面で足並みが揃わず、社内が混乱に陥ります。

持株会社は、グループ各社の株をまとめて持つことに特化した会社です。持ち株会社が子会社の株を所有して配当を受け取り、日々の事業経営は子会社の経営陣に任せる。この形をつくっておけば、所有と配当の権利を自社グループに集約したまま、日々の事業を決める権利だけを現場のリーダーへスムーズに渡すことができます。

### 「株の分け方」を先に決めておくべき理由

「誰に、どんな権利を持たせるか」の設計を後回しにすると、いざというときに経営の舵取りが揺らぎます。

会社の出口は、4つあります。売却、M&A、上場、廃業です。事業承継は、親族や社員に会社を継いでもらい、出口を次の社長に託す道と言えます。廃業以外の出口においては、必ず「この会社にはいくらの価値があるのか」が問われます。出口の準備は、自社の適正な価値を知ることから始まります。

株が親族や過去の役員などに散らばったままだと、自社の価格を算定する際にも、誰の持ち分をどう整理するかで膨大な時間と労力がかかってしまいます。あらかじめ持株会社などを活用して「所有と経営」を切り分けておけば、手続きを進める際にもスムーズです。

日本の企業に目を向けると、後継者が「いない」または「未定」の企業は50.1%にのぼります(出典:帝国データバンク「全国・全業種の約27万社を対象にした2025年の調査」)。この現実を見ても、会社の出口を迎える前に、「誰が株を持ち、誰に経営を託すのか」を前もって計画・整理しておく必要性がよく分かります。

最後に、このケースをご自身の会社に置き換えてみてください。

あなたの会社の株は今、誰が、どのような権利と共に持っていますか?

その状態のままで、いざというときに会社の出口を自由に選ぶ余地は残されているでしょうか。

※HTML版がこのページの正本です。本記事は事業に関する教育と情報提供であり、売却価格・融資・投資・税務の個別の助言ではありません。

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