廃業以外にもあった選択肢

廃業だけが会社の終わり方ではない。家族経営の実例から、選べる出口のあり方を示す。

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BCB Japan 編集部
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廃業を考えたときの事業譲渡という選択肢を示した図

奈良県吉野町で、3代続く仕出し弁当店がありました。2021年の暮れ、おせち料理の準備をしていた妻が突然厨房で倒れ、病院に運ばれ、経営者Aは多忙な年末年始をどうにか乗り越えましたが、心身ともに疲れ果ててしまいました。

一人に集中していた仕事

この店で働いていたのは、経営者と妻、数人のパートタイマーだけでした。経営者によると、調理の手伝いも、従業員の勤怠管理も、経理も、妻が一人で担っていたのです。

仕事と看病を続けるのは難しい。経営者はそう考え、廃業を決意。地元の商工会に相談すると、事務局長は「廃業ではなく、事業承継を検討されてみては」と言う。

(出典:中小企業基盤整備機構「事業承継・引継ぎポータル」の事例「有限会社上市魚市場」)

廃業から事業承継へ

商工会から依頼を受けた県の事業承継・引継ぎ支援センターが、県内で仕出し事業をしている会社を譲り先として選び、両者の面談を行いました。契約の前に、経営者Aは要望を書き出し、弁護士、税理士、中小企業診断士などの専門家と話す機会を持ちました。

譲り受けた会社は、経営者Aを社員として雇い、看病の都合に合わせて休めるようにすると約束しました。契約は10月に完了し、2023年1月には新しい名前の店がオープンすることになりました。経営者Aはその店の従業員として再就職しました。廃業も考えた経営者Aでしたが、今は料理人として働けることに喜びを感じているということです。

家族経営の小さな会社では誰か一人が抜けると事業を続けるのが難しくなること、早めに事業承継に取りかかるべきことを、この事例は提案しています。

「何も選ばない」出口とは

会社の出口は4つとあります。廃業、売却、M&A、上場。事業承継は、親族や社員が継ぐ道であり、承継後も会社の出口は引き続き4つあります。事業承継とは、ただ出口を次の社長に託し、引き延ばすことになります。

この事例の経営者Aは、最初に廃業を選びましたが、商工会が示したのは、事業承継という道。譲り先の会社に店を引き継ぎ、自分は従業員として料理人を続けます。このように、相談先を持つことで、選べる道が広がる場合があるのです。

出口の選択肢を決める基準は、社長自身がこの先どう生きていきたいかです。出口に不正解はありませんが、『何も選ばない』ということだけはお勧めできません。経営者Aは、今料理人として働けることに喜びを感じています。譲り先は、奥さんの看病の都合に合わせて休めるよう配慮してくれています。

廃業以外の3つの出口では、「この会社はいくらなのか」が問われます。エグジットの準備は、会社の価格を知ることから始まります。契約前に自身の要望を書き出して専門家と話すことも、エグジットの準備の1つです。

帝国データバンクの調査を見ると、後継者が「いない」または「未定」の企業は50.1%。後継者が決まっていない会社は、全国の調査対象の半分に及びます。

2024年に休業、廃業、解散した企業は69,019件あり、そのうち、直近の損益が黒字だった企業は51.1%もありました(出典:帝国データバンク)。このように黒字の会社でも、廃業する例は少なくありません。いつまでも出口を決めないでいると、黒字のうちに廃業という選択肢だけが残るかもしれません。

あなたの会社では、誰かが抜けると止まってしまう業務が、どれだけありますか。廃業を考える前に、譲るという出口を相談できる場所はありますか。

※HTML版がこのページの正本です。本記事は事業に関する教育と情報提供であり、売却価格・融資・投資・税務の個別の助言ではありません。

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